ワイヤーアーティスト 高橋節男

アーティスト魂があふれ出る超緻密な作品を生み出す原動力とは

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2024年7月、株式会社四方継1階に小さなアートギャラリーが誕生しました。

そのオープニングを飾って頂いたのがワイヤーアーティストの高橋節男さん。実は弊社社長の実弟です。温厚で気遣いの人である高橋さんですが、作品作りへの想いは情熱的かつ挑戦的です。生活の安定よりも創作活動へ向かうベクトルの比重が大きいため苦労されていることも多いようですが、ギャラリーでの個展は一つの転機となったのではないでしょうか。

落ちていたゼムクリップと父の一言から始まった成功体験

きっかけは不登校だった中学一年生のころ。
暇を持て余していた時に見つけたゼムクリップ。これを針金で作ってみよう、と思い立ったことが始まりでした。

作っているうちに楽しくなり、つなぎ合わせていくうちに動物のような形になっていったそうです。それを見ていたお父様の「それ売れるんじゃないか?」の一言から、父親の仕事に同行して日本全国で実演販売を行ったところ、とても売れ行きが良く、成功体験として子供の頃の高橋さんの心に刻まれました。

離島の中学から芸術の道へ

その一年間を経て、離島の廃校寸前の中学での生徒募集が目に留まり、離島留学をすることになった高橋さん。残り二年の中学生活を終えられ、無事に高松工芸高校へ進学されました。
芸術大学への進学を目指すコースであったため、日々デッサンを行う毎日を過ごし、高橋さんも沖縄県立芸術大学へと進まれました。

大学では造形基礎をはじめ、人体構造や自然観察を通した基礎造形力の習得、素材・技法の自己適性を探るそうですが、高橋さんはここでもやはりワイヤーアートを自分のものとして選択されました。

Q 色々な選択肢がある中でも大学での専攻にワイヤーアートを選ばれた理由は何ですか?

彫刻作品を作るというのは爆音とホコリがすごいんです。油絵などにしてもオイルの匂いがすごい。その点、ワイヤーであればほとんど音もしないしホコリも出ないし、臭くもない(笑)場所を選ばず製作できるという利点があります。

でも一番は子供の頃から慣れ親しんでいるというところですね。高校時代に東京の知り合いの作家さんからのご意見で、ビニールワイヤーを使うと被覆の内部がスチールなので素材の劣化が激しくなり、商品価値が付きにくくなるという事でステンレスワイヤーに変更していました。ブラッシュアップを繰り返すことで商品としての魅力が増し、満足できるものに少しでも近づけていければと考えています。

でも、商品価値を上げるために龍に玉を加えさせたり、目に宝石やガラス球を入れるてしまうと作品性が違ってくるので僕の考えの中ではやりたくない事なんです。あくまでもワイヤーのみで製作していきたいと考えています。

Q 個展でも一番の大作「昇竜」は卒業作品だとお聞きしましたが制作秘話など教えてください

実はワイヤーアートを自分の技法として選んだことで、指導して頂ける教授がいなかったんです。なので他の学生と同じ場所で製作するとうるさくて埃っぽいので自宅で製作をしていました。しかし何か月かしたころ教授たちから呼び出しを食らってしまい、キャンパスで製作せざるを得なくなったため大部屋にブースを作ってこもって仕上げました。

卒業制作として展示しようとしたところ、思った通り自立しない事が判明し、急場しのぎでスタンドを設置したりと大変な思いをしました。今回は天井ボルトとワイヤーで吊れているので安心です。

家に保管している時は壁に吊っていたのですが、重さに耐えきれず吊っている鴨居ごと落ちてきたりと本当に色々ある作品です(笑)

また、この頃は作品の完成度というか接合部の始末など細かい所に気が回っていなかったので、下手にさわると手を怪我してしまうのでお気を付けください。

Q 卒業後の制作活動について

東京に出て勝負してみたかったんですが、沖縄から引っ越すために半年間沖縄の飲食店の正社員として働いてお金をためてから東京に移り住みました。

東京では「花魁」を製作したのですが、頭の中の構想を形作るのにどのぐらいの時間がかかるかわからずに取り掛かりました。この作品は体を作った上に着物を四枚、一枚一枚着せています。着物の柄も織物のように繊細に作り上げ、髪の毛も一本一本形作っているため、仕上がった時には2年が経っていました。

そこで予算が底をついてしまい、10年間パートで働きました。働きながら製作するという事が苦手なので作品作りから離れた日々が続いている中、家族の都合で神戸に戻ってくることになりました。

神戸に帰ってきてからは小品を作っているのですが、作り始めた一年前のものと比べて現在の技術は比べ物にならないぐらい上がってきています。作品を作るときは必ず新しい技術を習得することを目標に製作していますので、10年間のブランクが無ければどれだけのものを作れる技量が身についていたのかと思うと残念な気がします。

Q 作品を作り続けていくための今後の活動

作品を作らずに働き続けるというのは自分には無理だと思っているので、どんなに足掻いてでも作品を作り続けてくつもりです。頭の中に山ほどある「作りたいもの」を阻害するものをなくしていって作り続けていければ幸せだな、と思います。

頭の中にできているものを作品にしていくときに、自分が思っている時間読みが甘くて数倍の時間がかかってしまうんです。こんなことをしているうちにもう一人の自分が作品を作ってくれないかな、なんて思いながら日々過ごしているんですが、やっぱり技術の向上が大切だと思っています。

また手に取って購入してもらえる作品として、アクセサリーや平面アート作品の販売などを行って興味を持っていただく、という事をやっていきたいなと思っています。興味を持っていただくことで大きな作品にも光が当たるときが来ると思っていますので、今後ネット販売や委託販売などを開拓していきたいと思います。

並行して、本当に創作していきたい頭の中にある芸術性の高い作品を作って、コンペなどにもどんどん挑戦していきたいです。

ワクワク感があるからこそ作り続けていける

作品を作っている時が何より幸せな時間、という高橋さん。作品ごとにテーマを決めて試行錯誤を重ねておられます。自分の頭の中にある凄いものが形になっていくワクワク感が原動力になり、先へ先へと手が動いていく。そして乗り越えてしまうと過去の作品になってしまい、更に次の作品に挑戦していく。考えているよりも時間がかかってしまう事が多いけれど、頭の中にある凄いものは確実に現実の作品として自分の目の前に現れるといいます。これからも素晴らしい作品を見せて頂けることにこちらもワクワクしてしまいます。


今回インタビューさせて頂いた感想としては、良い話ばかりではなく芸術家の苦悩もひしひしと伝わってきたものではありました。ですが、実際に一か月以上の長い間近くで作品を見て、手でふれさせて頂いたことで作品のクオリティの高さや唯一性を感じました。
今回、個展としては終了いたしましたが、ネット販売や委託販売などもお考えなので、ご興味のある方は是非Instagramから直接お問合せ下さい。

高橋節男さん、これからも頑張ってください!


高橋 節男(ワイヤーアーティスト)
 Instagram:@setsu00hariganeya
 Mail:twistoogolplex@gmail.com

インタビュー動画

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